POINT 01
BCPで記録を二つの流れに分ける
厚生労働省の「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」は、訪問サービスについて、訪問中・移動中の職員を想定し、利用者の安否確認方法や連絡手段を平時から検討するよう示しています。通信麻痺時は複数の手段、システム停止時は手書き処理とデータのバックアップを検討するとしています。通常のサービス提供記録とは別に、災害対応の活動記録を持つという発想が重要です。
まず記録を「安否・安全確認」と「サービス提供実績」に分けます。前者は、誰がいつ、どの手段で連絡し、本人・家族・近隣者・避難先から何を確認したかを残すものです。後者は、実際に訪問できたか、開始・終了時刻、予定した援助のうち何を実施したか、変更や中止の理由を残すものです。電話がつながり無事を確認できても、それだけで訪問介護を提供したことにはなりません。
架空例として、9月12日15時に地震が発生し、ヘルパーAが移動中に利用者Bの家族へSMSを送ったとします。「15:20、家族から本人は自宅で無事と返信。道路損傷のため訪問中止を管理者へ報告」は安否記録です。実績欄には訪問なし、予定変更の経緯を別途記録します。
実務チェックリスト
- 安否確認記録と実績記録の様式・保存先を分ける
- 訪問中・移動中・事業所待機中の記録責任者を決める
- ケアマネジャーや家族への連絡結果も時刻付きで残す
- 安否を確認できたことを、訪問サービスの提供済み扱いにしていない
POINT 02
通信障害時は代替記録を先に使える形にする
代替記録は、通信が戻ったら入力するためのメモではありません。現場で安全を判断し、後から第三者が経緯を追える最低限の台帳です。紙の訪問一覧、利用者ごとの緊急連絡先、筆記具、職員連絡網を、浸水しにくく施錠できる場所に分散保管します。紙に個人情報を載せる範囲は必要最小限にし、持出し・返却者も記録します。
様式には、発生日時、記録者、利用者IDまたは氏名、確認方法、確認先、結果、次の行動、報告先、記録媒体の番号を設けます。サービスを提供した場合は、提供実績の欄に実施内容と時刻を記入し、未実施なら「未実施」と明記します。空欄は「未確認」なのか「該当なし」なのか分からないため、記号の意味を決めておきます。
個人情報保護委員会・厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」は、媒体の性質に応じた安全管理、保存媒体の劣化や消失を防ぐ保管、アクセス管理などを示しています。法令上必要な安全管理措置と、事業所が採用する紙台帳・封印袋・暗号化バックアップなどの運用は区別し、採用理由と責任者をBCPに書きます。
実務チェックリスト
- 紙様式を通信断の想定で実際に記入し、読めるか確認する
- 代替記録の回収場所、回収期限、保管責任者を決める
- 紙の紛失・誤送付時の報告ルートを定める
POINT 03
復旧後は「照合してから一度だけ」入力する
通信やシステムが復旧した後に起きやすいのが、紙の内容を複数人が別々に入力し、同じ訪問が二重登録されることです。枠ごとの入力担当者を決め、入力前に「対象日・利用者・訪問枠・代替記録番号」を突合します。入力済みの紙には入力日時と担当者を記し、原本はすぐに捨てません。
実務では、①復旧時刻を記録、②新規入力を一時停止、③紙台帳を利用者・日付順に並べる、④予定表・連絡記録・紙実績を照合、⑤確定入力、⑥管理者が件数と例外を確認、の順にします。既に一部入力されていた場合は上書きせず、重複候補に印を付けて管理者が一つに確定します。訂正時も元の記録が分かる履歴を残します。
e-Gov掲載の指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第39条は、指定訪問介護について、訪問介護計画や提供した具体的なサービスの内容等の記録を整備し、完結の日から2年間保存すると定めています。これは最低限の保存義務であり、災害時の活動記録の様式や復旧手順まで一律に定めるものではありません。事業所の保存規程と自治体の指導も確認します。
実務チェックリスト
- 復旧後の入力担当者と承認者を別にする
- 入力済み印、重複候補、未確認の扱いを決める
- バックアップから復元したデータの日時・範囲・結果を記録する
POINT 04
感染症・災害BCPを机上訓練で検証する
厚生労働省の「作成したBCPを役立つものにするための机上訓練を解説」は、感染症と自然災害の両方のBCP、研修・訓練の定期実施を示し、訪問系は年1回の研修・訓練として整理しています。制度の適用時点や事業種別による扱いは、最新の運営基準・自治体通知で確認してください。訓練は避難だけで終わらせず、発災から復旧まで記録がつながるかを試します。
架空の訓練では、平日15時、訪問中に震度6強、停電と通信断、翌朝にシステム復旧という条件を置きます。進行役は「利用者の安全確認」「安否と実績の切り分け」「紙への記録」「ケアマネジャーへの報告」「復旧後の照合」を順に付与します。評価は、誰が始めたか、何分で共有できたか、記録の空欄や重複がなかったか、次回までの担当と期限が決まったかで行います。
感染症シナリオでは、訪問職員の体調不良や接触の報告を想定し、訪問可否の判断記録、代替職員の手配、利用者への連絡、実績の扱いを確認します。感染症対応の医学的判断は、保健所や医療職など事業所の連絡先に従います。訓練後は課題をBCPの改訂表に移し、次回訓練で再確認します。
実務チェックリスト
- 通信断・停電・訪問中の三つを同時に想定する
- 安否確認とサービス提供実績を別欄で記録する
- 訓練の達成度、迅速性、正確性、柔軟性と改善担当・期限を残す
よくある質問
電話で利用者の無事を確認したら、訪問実績にできますか?
できません。電話での安否確認は災害対応の記録です。訪問介護の実績は、実際の提供内容と時刻、変更・中止の事実を別に確認して記録します。
紙の代替記録は、システム復旧後に捨ててもよいですか?
すぐに捨てず、入力済みであることを照合できる状態で保管します。指定基準の保存対象や事業所の保存規程に照らし、廃棄時期と方法を管理者が判断してください。
BCP訓練は避難訓練だけで足りますか?
避難訓練だけでは、記録の代替や復旧後の照合を検証できません。厚生労働省資料を参考に、机上訓練と実動訓練を目的に応じて組み合わせ、記録と改善まで確認します。
参考にした公式資料
- [1] 厚生労働省「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」
- [2] 厚生労働省「作成したBCPを役立つものにするための机上訓練を解説」
- [3] 個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」
- [4] e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
本記事は公開日時点の公式資料をもとにした一般的な解説です。実際の取扱いは最新の法令・通知と指定権者・自治体の案内をご確認ください。
記事の構成・文章作成にはAIを補助的に利用しています。制度上の取扱いはリンク先の公式資料でお確かめください。
本文中の記録例は説明のための架空例です。実際の記録には確認できた日時・行為・発言だけを記載してください。
記録作成から確認・印刷まで一元化
予定表の写真・PDFを取り込み、日付・時間・担当者を確認してサービス提供記録を作成できます。
かいごるの機能を見る ・ 導入について相談する