POINT 01
「拒否」ではなく、その場で起きたことから書き始める
「入浴拒否」「介護拒否」とだけ書くと、本人が入浴そのものを望まなかったのか、突然の訪問に驚いたのか、衣服を脱ぐことに抵抗したのかが分かりません。まず日時、場所、予定していた支援、本人の姿勢や動作、発言を分けて書きます。本人の発言は、可能な範囲で言葉を変えずに記録します。発言がなかった場合も、「手を引いた」「浴室入口で立ち止まった」など観察できた事実にします。
厚生労働省の「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第2版)」は、認知症の状態にかかわらず本人には意思があることを前提にし、言葉だけでなく表情や身振りも意思表示として読み取るよう示しています。したがって、「理解できない」「気分が悪いようだ」と評価で終えず、何を見聞きしたかを先に残します。これは医学的な原因を判断する記録ではなく、支援場面の事実を共有する記録です。
実務チェックリスト
- 訪問時刻、場所、予定していたサービスを記録したか
- 本人の言葉を、解釈を足さずに記録したか
- 表情、手の動き、立ち位置など観察事実を書いたか
- 「拒否」「不穏」だけで終わっていないか
POINT 02
声かけは「何を言ったか」と「反応」を一組で残す
記録では、支援者の声かけを具体化します。「入浴しますか」と尋ねたのか、「先に顔を拭くこともできます」と選択肢を示したのかで、次回の関わり方が変わります。声をかけた順番、説明した内容、待った時間、本人の反応を時系列で並べると、押し問答の印象ではなく支援の経過になります。本人が答えにくそうなときは、開かれた質問や短い説明を試したことも記録します。
厚生労働省の同ガイドラインは、本人が理解しやすい言葉で説明し、時間をかけて意思表明を支えること、本人が意思決定をしない自由もあることを示しています。現場の運用としては、一度断られた直後に繰り返し迫るのではなく、話題を変える、選択肢を小さくする、少し待つなど、本人が落ち着いて選べる余地をつくります。ただし、これらは事業所の手順やサービス内容に沿って行い、独断で予定外の介助に切り替えないことが大切です。
実務チェックリスト
- 実際に使った声かけを要約せず具体的に書いたか
- 声かけ後の本人の言葉・動作・表情を対応づけたか
- 待った時間や、場所・人数など場面の条件を残したか
- 無理に説得したように読める表現になっていないか
POINT 03
再提案した内容と、実施できた範囲を分けて記録する
再提案は、何をどの形で示したかを記録します。たとえば「今すぐ浴槽に入る」以外に「今日は足元だけ拭く」「着替えは上着だけにする」「次回に相談する」といった選択肢を示した場合、その内容を残します。本人が選んだ場合は選択を、選ばなかった場合はその事実を記します。支援者の推測で「本当は入浴したかった」と書かないようにします。
架空例として、14時10分、居室で更衣を提案すると、本人は「今日は出かけないから着替えない」と発言し、上衣を押さえた。支援者が「上着だけ替える方法もあります」と伝えたが、本人は首を横に振った。5分待って再度確認したところ「明日にして」と発言。本人の同意が得られなかったため更衣介助は実施せず、手洗いの声かけには応じた、という記録です。ここでは更衣をしなかった事実と、実施できた支援を混ぜずに書けます。
実務チェックリスト
- 再提案の内容と回数を記録したか
- 本人が選んだこと、選ばなかったことを分けたか
- 実施できた支援と未実施の支援を明示したか
- 架空例や推測を実際の記録に混ぜていないか
POINT 04
中止の判断と次の連絡を、権利尊重の経過として残す
本人が繰り返し断り、支援を続けることで負担や不安が強まりそうな場合は、事業所の手順に従っていったん中止することがあります。記録には「本人の意思を確認し、同意が得られないため、当該介助は実施しなかった」と、支援者の判断と本人の表明を区別して書きます。サービス全体が中止になったのか、予定の一部だけ未実施なのかも明確にします。介護職が病気や薬の変更などを判断するのではなく、普段と違う様子があれば観察事実として報告し、必要な連絡先は事業所のルールで確認します。
厚生労働省のガイドラインは、本人の意思をチームで継続的に把握し、本人の生活に影響する意思決定では記録を残すことを示しています。記録後は、サービス提供責任者へ当日中に報告し、必要に応じてケアマネジャーや家族など、あらかじめ定めた連絡先へ共有します。個人情報保護委員会の医療・介護関係者向けガイダンスでは、介護関係記録に含まれる病歴等は要配慮個人情報になり得るため、共有は利用目的と事業所のルールに沿って必要な範囲に限定します。
実務チェックリスト
- 中止・一部未実施・代替実施の別を明記したか
- 本人の表明と支援者の判断を混同していないか
- 報告先、報告時刻、報告内容を残したか
- 共有範囲と方法が事業所の個人情報ルールに合っているか
POINT 05
次の訪問につながる記録にするための確認手順
サービス提供責任者は、記録を受け取ったら「拒否があった」という結論だけでなく、起点となった場面、本人の言葉、試した声かけ、再提案、結果を確認します。次回の担当者には、本人が避けたいことだけでなく、受け入れられた関わり方も申し送ります。たとえば「正面から急に更衣を提案すると手を引いたが、本人が選んだ上衣を見せると会話できた」のように、観察された条件と結果を対応させます。
同じ支援を次回も必ず実施できるとは限りません。厚生労働省のガイドラインも、本人の意思は時間や状況で変わり得るため繰り返し確認することを示しています。前回の記録は決めつけのラベルではなく、次の確認のための材料です。記録を電子化する場合も、写真や予定表から作った下書きをそのまま確定せず、担当者と利用者を照合し、本人の言葉・実施結果を確認して編集します。かいごるはその確認や訪問確認、印刷を支援できますが、記録を自動で事実として確定する運用ではありません。
実務チェックリスト
- 次回担当者が再現できる場面の情報があるか
- うまくいかなかったことだけでなく応じた支援も書いたか
- 前回の意思を次回の同意と決めつけていないか
- 下書き・照合・確認・確定の担当を明確にしたか
よくある質問
記録には「介護拒否」と書いてはいけませんか?
事業所の項目名として使うことはありますが、それだけで終えないことが重要です。本人の言葉、動作、場面、声かけ、再提案、結果を併記し、「拒否」と支援者の評価だけが残らないようにします。
本人が何も言わず手を払った場合はどう書きますか?
「拒否した」と断定せず、「更衣の声かけ時に右手で支援者の手を2回払った」「発言なし」のように観察事実を書きます。その後の声かけと再確認の結果も続けて記録します。
家族には毎回連絡する必要がありますか?
一律に決めつけず、契約や事業所の連絡基準、ケアマネジャー等との連携方法に従います。未実施が継続した場合や安全面の確認が必要な場合は、記録した事実をもとにサービス提供責任者へ報告し、必要な範囲で連絡します。
参考にした公式資料
- [1] 厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第2版)」
- [2] 厚生労働省「介護事業所における業務効率化の手引き」掲載資料(介護記録・報告書の作成)
- [3] 個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」
- [4] e-Gov法令検索「介護保険法」
本記事は公開日時点の公式資料をもとにした一般的な解説です。実際の取扱いは最新の法令・通知と指定権者・自治体の案内をご確認ください。
記事の構成・文章作成にはAIを補助的に利用しています。制度上の取扱いはリンク先の公式資料でお確かめください。
本文中の記録例は説明のための架空例です。実際の記録には確認できた日時・行為・発言だけを記載してください。
記録作成から確認・印刷まで一元化
予定表の写真・PDFを取り込み、日付・時間・担当者を確認してサービス提供記録を作成できます。
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